薬剤師のストレス、休日にどう抜く?
国内&海外のリフレッシュ術を全力解説
薬剤師の仕事は、患者さんへの対人対応に監査、疑義照会、そして突発的なイレギュラー対応まで、とにかく気を配る場面が多いですよね。だからこそ、たまの休日にしっかりストレスを抜くことが、次の週のパフォーマンスを守るためにとても大切です。今回は睡眠の話はいったん置いておいて、「ストレス解消」だけに全力でスポットを当てていきます。後半では海外のリラックス文化まで紹介するので、「へぇ、こんな休み方があるんだ!」という新しい発見もきっとあるはずです。

まず、薬剤師はこんなに忙しい
解消法の前に、少しだけ「私たちがどれだけ気を張って働いているか」を言葉にさせてください。ここに共感してもらってから読み進めてもらえると、後半の解消法がもっと刺さると思うのです。
ひっきりなしの対人業務
薬剤師の一日は、とにかく人と向き合い続ける仕事です。服薬指導では患者さん一人ひとりの状態を読み取り、言葉を選び、時にはデリケートな話題にも踏み込みます。窓口では待ち時間へのクレームや、理不尽な要求、いわゆるカスタマーハラスメントに対応しなければならないことも。一度の対応で気持ちがどっと消耗するのは、対人業務ならではのしんどさですよね。
ミスの許されない緊張感
そのうえで、私たちの仕事には「間違えてはいけない」という強い緊張感が常につきまといます。調剤の監査、用量チェック、飲み合わせの確認、そして疑義照会。医師に電話をかけるときの、あの独特の気の使い方をわかってくれる人は多いはずです。薬は使い方を誤れば患者さんの体に直接影響します。この責任の重さが、じわじわと心の負担になっていきます。
人手不足と、終わらない仕事
さらに現場では、慢性的な人手不足が業務負担に拍車をかけています。ある調査では、医療従事者のうち、熱意も余裕も持てない状態と燃え尽き気味の状態を合わせると6割を超えるという結果も報告されているほどです。一人あたりの負担が大きい職場ほど、相談する余裕すらなくなり、対物業務も対人業務も精神的な負担が重くのしかかる。そんな構造が指摘されています。
私が現場で一番キツいと感じるのは、イレギュラーな対応に追われる瞬間です。やろうと思っていた業務があるのに割り込みが入って、あれもこれも中途半端なまま時間だけが過ぎていく。あの感覚、共感してくれる方は多いのではないでしょうか。
そして何より厄介なのが、家に帰っても仕事のことを考えてしまうことです。「あれ、終わってなかったな」「明日あれをやらなきゃ」と、頭の中に仕事が居座り続ける。体は休んでいるのに、脳がまったく休めていない状態なんですよね。
実はこの「脳が休めない感覚」は、研究の世界でも問題視されています。薬剤師をはじめ医療者は、複数のことを同時にさばくマルチタスクで消耗しやすいと指摘されているのです。だからこそ、休日の「抜き方」がとても重要になってきます。ここからが本題です。
前半は日本ですぐできるストレス解消法、後半は海外のリラックス文化を紹介します。研究の裏づけ(エビデンス)がある方法を中心にしつつ、私自身が実際にやっている方法や「これは効きそう」と感じたものも、正直にお伝えしていきます。
【日本編】休日にできるストレス解消法

① 体を動かす:ゴルフ・ウォーキングでリセット
ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動は、ストレス対処とメンタル維持の王道として、研究でも繰り返し挙げられている方法です。難しいことを考えず、ただ体を動かすだけで気分が晴れるのは、多くの方が体感的に知っているはずです。
私のイチオシはゴルフです。ストレス解消として、本当に優秀だと思っています。理由はシンプルで、プレー中は目の前の一打に集中するので、仕事のことを考えるスキがないからです。しかも自然の中を数キロ歩くので、有酸素運動としても優秀。先ほどお話しした「家でも仕事を考えてしまう」問題への、私なりの答えの一つがゴルフなんです。
「ゴルフはハードルが高い」という方にはウォーキングがおすすめです。特に、後半で紹介する「森の中を歩く」やり方だと、効果がぐっと高まりますよ。
② サウナ・温泉で「ととのう」
サウナ好きとしては、ここは熱く語らせてください。サウナは今や日本でも大ブームですが、科学的にも自律神経を整える効果が注目されています。サウナ→水風呂→外気浴を繰り返すと、交感神経と副交感神経が切り替わり、あの「ととのう」感覚が生まれます。研究でも、サウナのあとに副交感神経(リラックスの神経)が優位になることが報告されています。
温泉も同じく、最高のリフレッシュです。温かいお湯にゆっくり浸かると、体の緊張がほどけていきますよね。私は温泉旅行が大好きで、実はもうすぐ新婚旅行も控えているのですが、「非日常の場所に身を置くこと」そのものが、仕事モードの脳から抜け出すスイッチになると感じています。いつもと違う景色、いつもと違うお湯、いつもと違う食事。それだけで頭の中から仕事がすっと消えていく感覚があります。
無理に長時間入るよりも、自分が気持ちいいと感じる範囲で楽しむのが一番です。水分補給はしっかりと。体調が悪い日や飲酒後は避けましょう。心臓や血圧に不安がある方は、事前に主治医に相談してから楽しむと安心です。
③ マインドフルネス・瞑想:まずは1〜3分の呼吸から
「瞑想」と聞くと少し身構えてしまいますが、要は「今、この瞬間」に意識を向ける練習のことです。過去の失敗や未来の不安、つまり「家に帰っても考えてしまう仕事のこと」から、意識をそっと”今”に戻してあげるイメージですね。
いきなり長時間やる必要はありません。1〜3分の「意識的な呼吸」から始めるのがおすすめされています。薬学生を対象にした研究では、「Headspace」のような瞑想アプリを毎日使うことで、ストレスや燃え尽き(バーンアウト)のスコアが改善したと報告されています。医療従事者向けのオンライン音声プログラムでも、不安や落ち込みの改善に効果があったそうです。忙しい私たちでも、通勤の途中や寝る前の数分で取り入れられるのが嬉しいところです。
④ ジャーナリング(日記)+AI相談という新しい形
自分の感情や経験を書き出すジャーナリング(日記)は、心の回復力(レジリエンス)を高め、自分の状態を客観的に見つめ直すのに役立つ方法です。

実は私、日記はまだやったことがないのですが、すごく効果がありそうだと感じている方法です。
「今日はこれを頑張ったぞ」とか「ここを改善したいな」と書き出すことで、自分自身を客観的に評価できるのがいいなと思うのです。
さらに一歩進んだ使い方として、書いた内容をChatGPTなどのAIに相談してみるのもアリだと考えています。まるで話を聞いてもらっているような感覚になりますし、客観的なアドバイスももらえます。日記×AIを組み合わせれば、ただ書くだけよりも、もっと効果を強化できるのではないかと期待している方法です。
もちろん、AIに患者さんの情報や個人情報を書き込むのはNGです。そこは薬剤師らしく情報の扱いに気をつけつつ、あくまで自分の気持ちを整理する相手として使うのがおすすめです。
⑤ 自律訓練法:場所を選ばない自己リラックス法
あまり聞き慣れないかもしれませんが、自律訓練法は「腕が重い」「腕が温かい」といった言葉を自分に言い聞かせて、心と体をゆるめていく自己催眠のようなリラックス法です。道具もいらず、どこでもできるのが魅力です。
面白いことに、セルビアの薬剤師を対象にした研究では、週3回この方法を実践したところ、ストレスへの対処力・対人関係・自信が大きく向上したと報告されています。同じ薬剤師を対象にしたデータというのが、なんだか説得力がありますよね。
⑥ ヨガ・アート・地中海食など
ほかにも、研究で効果が示されている方法があります。看護師を対象にした8週間の研究では、ヨガによってセルフケア力が高まり、落ち込みが改善しました。イギリスの研究では、集団アートセラピー(みんなで絵を描く)を週1回・6週間続けたところ、心の疲れが改善し、その効果が3か月後も続いたそうです。食事の面では、地中海食のような健康的な食生活が、心の状態を支える土台になるとされています。
大事なのは、「これなら続けられそう」と思えるものを一つ選ぶことです。全部やろうとすると、それ自体がストレスになってしまいますからね。運動が好きならゴルフやウォーキング、じっくり系ならサウナ・瞑想・日記、というように、自分に合うものを見つけてみましょう。
【海外編】世界のリラックス文化に学ぶ
ここからは視点を変えて、海外の「休み方」を見ていきましょう。国によって、ストレスとの付き合い方にお国柄が出るのが面白いところです。「こんな休み方もあるのか!」という発見があるはずです。

🇫🇮 フィンランド:サウナは「聖なる場所」
サウナ発祥の国フィンランドでは、サウナは単なる娯楽ではなく、心と体を整える神聖な場所とされています。生活に深く根づいていて、「サウナに入るときは悩みごとを全部忘れる」のが流儀なのだそうです。日本のサウナブームのルーツは、まさにここにあるんですね。サウナ好きの私としては、いつか本場で”ととのって”みたいものです。
🇩🇰 デンマーク:ヒュッゲ(Hygge)
幸福度ランキングの常連であるデンマークには、「ヒュッゲ」という考え方があります。ざっくり言うと「居心地のいい、ほっとする時間」のこと。キャンドルを灯し、温かい飲み物を片手に、大切な人と何でもない時間を過ごす。そんなシンプルな幸せを大切にする文化です。お金をかけずに今日から真似できるのがいいですよね。
🇸🇪 スウェーデン:フィーカ(Fika)
スウェーデンには、「フィーカ」という、コーヒーと甘いお菓子を楽しむ休憩文化があります。午前と午後に15分ほど手を止めて、同僚とおしゃべりしながら一息つくのが定番です。面白いのは、これがサボりではなく「仕事の効率を上げる時間」として尊重されていることです。しっかり休むからこそ、しっかり働ける。この考え方は、忙しい薬局現場こそ見習いたいところです。
🇯🇵→🌍 実は日本発!「森林浴(Shinrin-yoku)」
最後は、少し誇らしい逆輸入ネタです。実は「森林浴」は日本発祥で、今では “Shinrin-yoku” として世界中に広まっているのをご存じでしょうか。研究では、森を歩くとストレスホルモン(コルチゾール)が下がり、血圧や脈拍が落ち着き、リラックスの神経が優位になることがわかっています。
ウォーキングが好きな方は、いつもの散歩を「緑の多い場所でのウォーキング」に変えるだけで、リフレッシュ効果がぐっと高まります。近所の大きな公園でも十分ですよ。
| 国・文化 | キーワード | 今日から真似できること |
|---|---|---|
| フィンランド | サウナ | サウナ中は悩みを持ち込まない |
| デンマーク | ヒュッゲ | キャンドルと温かい飲み物でくつろぐ |
| スウェーデン | フィーカ | 意識的に15分の休憩をとる |
| 日本発→世界 | 森林浴 | 散歩コースを緑の多い場所に変える |
大事なのは「一つのことに集中する時間」をつくること
ここまでいろいろ紹介してきましたが、共通して言えるのは、休日は「ユニタスク」を意識しようということです。仕事中は複数のことを同時にさばくマルチタスクで消耗するからこそ、休みの日くらいは一つのことだけに没頭する時間をつくって、脳の”注意力”を休ませてあげましょう。
ゴルフの一打に集中する、サウナで何も考えない、日記に今日一日を書き出す。どれも「一つのことに集中する」という点で共通しています。これこそが、家に帰っても仕事を考えてしまう私たちにとって、なかなか効く”処方せん”だと思うのです。
ここは正直にお伝えします。個人のセルフケアはもちろん大切ですが、研究では職場の勤務スケジュールや業務フローの改善(組織的な対策)のほうが、薬剤師のメンタルを守るうえでより強力だとも指摘されています。長時間シフトが続く、人が足りないといった構造的な問題は、個人の頑張りだけで抱え込まないでください。つらさが続くときは、産業医や勤務先の相談窓口、医療機関に相談することも、立派なセルフケアです。
まとめ
今回は、薬剤師のストレス解消法を日本編と海外編でたっぷり紹介しました。運動(ゴルフ・ウォーキング・森林浴)、サウナ・温泉、瞑想、日記+AI、自律訓練法。どれも一度は試す価値があります。まずは「これなら続けられそう」なものを一つ、始めてみてください。
そして海外の文化を知って改めて感じたのは、「しっかり休むことは、しっかり働くための準備」だということです。休むことに罪悪感を持つ必要はありません。むしろ、私たちがプロとして良いパフォーマンスを出すために、堂々と休みましょう。お互い、無理せずいきましょうね。
参考資料
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- Luangapichart, P., Saisavoey, N., & Viravan, N. (2022). Efficacy and Feasibility of the Four-Week Online Audio-Based Mindfulness Program ‘Mindful Senses’. Healthcare, 10(12), 2532.
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- Zavaleta-Monestel, E., et al. (2026). Pharmacist burnout: from coping to system accountability. Frontiers in Public Health, 13, 1749332.
- Han, J. H., et al. (2025). Effects of Third-Wave Cognitive Behavioral Therapy for Healthcare Professionals’ Burnout. Healthcare, 13(24), 3253.
- 政府広報オンライン「人はなぜ、森へ行くとリラックスするのか。」(宮崎良文 千葉大学名誉教授)
- パーソル総合研究所「医療従事者の職業生活に関する定量調査」



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