かかりつけ薬剤師の算定が大きく変わった
服薬管理指導料への統合と新2加算
かかりつけ薬剤師指導料(76点)は廃止。評価の軸は「肩書き」から「実務の実績」へ。区分・同意・手帳記載・新設加算の取り方まで、一次資料ベースでまとめました。
まず結論:3つの大きな変化
令和8年度改定で、かかりつけ薬剤師の評価は包括的評価から実績重視へ転換しました。押さえるべきは次の3点です。
- かかりつけ薬剤師指導料(76点)とかかりつけ薬剤師包括管理料(291点)が廃止され、服薬管理指導料の「イ かかりつけ薬剤師が行った場合」に統合されました。
- 点数は「イ(かかりつけ)」も「ロ(それ以外)」も同額(服薬管理指導料1=45点/2=59点)。かかりつけ業務は新設の2加算で別途評価されます。
- かかりつけ薬剤師の個人要件が緩和(勤務経験5年→3年、在籍1年→6か月、週32時間→31時間)。算定には施設基準の届出が新たに必要になりました。
旧制度との違い早見表
令和6年度まで独立点数だった「かかりつけ薬剤師指導料」が、服薬管理指導料の区分へと再編された流れを一覧にしました。
| 区分・加算 | 令和6年度(改定前) | 令和8年度(改定後) |
|---|---|---|
| かかりつけ薬剤師指導料 | 76点(独立点数) | 廃止→服薬管理指導料1のイ・2のイに統合 |
| かかりつけ薬剤師包括管理料 | 291点(独立点数) | 廃止 |
| 服薬管理指導料1(3月以内・手帳あり) | 45点 | イ(かかりつけ)45点/ロ(それ以外)45点 |
| 服薬管理指導料2(1以外) | 59点 | イ 59点/ロ 59点 |
| かかりつけ薬剤師フォローアップ加算 | — | 【新設】50点(3月に1回) |
| かかりつけ薬剤師訪問加算 | — | 【新設】230点(6月に1回) |
ポイントは「点数の付け替え」ではなく評価構造そのものの転換です。かかりつけとして日々行う服薬指導は本体点数に内包され、電話フォローや患家訪問といった“実務の実績”が加算で可視化される設計になりました。
算定要件:施設基準・個人要件
服薬管理指導料1のイ・2のイ(かかりつけ薬剤師が行った場合)を算定するには、あらかじめ地方厚生局長等への届出が必要です。満たすべき要件は大きく「薬剤師個人の要件」と「薬局の施設要件」に分かれます。
① 薬剤師個人の要件(全て満たす)
- 勤務経験:保険薬剤師として3年以上の保険薬局勤務経験(旧5年)。病院薬剤師経験は1年を上限に算入可。
- 勤務時間:当該薬局に週31時間以上勤務(旧32時間)。育児・介護休業等の措置時は週24時間以上かつ週4日以上。
- 在籍期間:届出時点で当該薬局に継続6か月以上在籍(旧1年)。産休・育休・介護休業からの復職は休業前期間を合算可。
- 研修認定:薬剤師認定制度認証機構が認証する研修認定を取得していること。
- 地域活動:医療に係る地域活動の取組に参画していること。
② 薬局の施設要件
- 次のいずれか:常勤保険薬剤師の在籍期間が平均1年以上、または管理薬剤師が継続3年以上在籍。
- 患者のプライバシーに配慮した独立カウンター(パーテーション等での区切り)を有すること。
同意の取得と手帳への記載
かかりつけとして算定するには、患者本人への説明と同意、そして手帳への所定の記載が前提です。窓口での一連の流れを押さえましょう。
同意〜記録までの基本フロー
- 算定しようとする薬剤師本人が、かかりつけ薬剤師の業務内容・意義・役割を説明する。
- 同意取得は複数回来局している患者に対して行う。同意を得た処方箋受付時から算定可能。
- 患者の手帳に薬局名・所在地・連絡先・開局時間・薬剤師氏名を記入し、氏名の近傍に「かかりつけ」と記入する。
- その記載ページのコピー等を薬局で保管し、薬剤服用歴等にもその旨を記載する。
原則として、別の薬局のかかりつけ薬剤師の氏名が記載されている手帳に上書きしてはいけません。また算定できるのは1人の患者につき1薬局・1薬剤師のみで、同一月内は同一薬局の同一薬剤師について算定します。
新しく設けられた2つの加算の取り方
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点・3月に1回)
対象は服薬管理指導料1のイ又は2のイを算定している患者。前回調剤後から次に処方箋を持参するまでの間に、かかりつけ薬剤師が電話等で服薬状況・残薬状況を個別に確認・指導し、再度処方箋を受け付けたときに算定します。
前提として、次のいずれかを算定した患者が対象です。外来服薬支援料1/服用薬剤調整支援料1・2/調剤管理料の調剤時残薬調整加算/薬学的有害事象等防止加算。つまり「残薬・多剤・有害事象への介入」とセットで活きる加算です。
一律内容の電子メール一斉送信や、アプリの定型設問チェックのみで完結する形式は対象外です。患者の状況を踏まえた個別具体的な確認・助言が必要で、実施した日時・内容を薬歴に記載します。調剤後薬剤管理指導料・在宅患者訪問薬剤管理指導料・(介護予防)居宅療養管理指導費を算定している患者は同月算定不可です。
かかりつけ薬剤師訪問加算(230点・6月に1回)
患者・家族の求めに応じ、かかりつけ薬剤師が患家に訪問して服用薬の管理方法を指導・残薬整理し、その結果を保険医療機関に情報提供した場合に算定します。
あらかじめ訪問で行う指導内容と、本加算で生じる患者自己負担額(交通費を含む)を説明し了解を得ること。交通費は実費で患家負担です。外来服薬支援料1・在宅患者訪問薬剤管理指導料・服薬情報等提供料等を算定している患者には算定できません。
かかりつけになると取れる関連加算の整理
フォローアップ加算は、前提となる以下の算定項目とセットで理解すると取りこぼしが減ります。日々の残薬・ポリファーマシー対応が、そのまま加算の土台になります。
| 算定項目 | 主な場面 |
|---|---|
| 外来服薬支援料1 | 患者が持参した服用薬を一包化等で整理・支援 |
| 服用薬剤調整支援料1・2 | 多剤服用患者の減薬提案・調整支援 |
| 調剤管理料 調剤時残薬調整加算 | 調剤時に残薬を踏まえ処方変更・減数調剤 |
| 薬学的有害事象等防止加算 | 重複投薬・相互作用・副作用等の防止対応 |
経過措置と「旧同意」の扱い
現場の最大の関心事「旧制度で取った同意を取り直す必要があるか」への答えです。
- 令和8年5月31日以前に取得した同意は、その効力を有します。つまり原則として取り直しは不要です。
- 経過措置として、令和8年5月31日までにかかりつけ薬剤師指導料の施設基準を届け出ている薬局は、同年11月30日までの間、薬局の施設要件(在籍期間に関する要件)を満たすものとみなされます。
経過措置や細かな取扱いは、疑義解釈の続報(その2以降)で追加・変更される可能性があります。実際の届出・算定前には、必ず厚生労働省の令和8年度診療報酬改定ページで最新の疑義解釈をご確認ください。
よくある迷いどころ Q&A
かかりつけの服薬管理指導料は、以前の76点より下がったということ?
「かかりつけだから高い点数」という独立評価(76点)は廃止されました。本体は「ロ それ以外」と同額になり、かかりつけとしての実務はフォローアップ加算(50点)・訪問加算(230点)で評価する構造に変わりました。実際の算定は、どれだけ実務(電話フォロー・患家訪問等)を行えるかで変動します。
かかりつけ薬剤師が不在のときは誰も算定できない?
やむを得ない事由でかかりつけ薬剤師が業務を行えない場合は、他の保険薬剤師が「1のロ」又は「2のロ」を算定します。その際に得た情報は、かかりつけ薬剤師と共有する必要があります。
フォローアップ加算は「電話をかければ取れる」?
いいえ。前提となる算定項目(外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料、調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算のいずれか)を算定した患者が対象で、かつ患者状況を踏まえた個別具体的な確認・指導が必要です。一斉メールやアプリの定型チェックのみでは対象外です。
新たに届出がいると聞いたが、何を届け出るの?
服薬管理指導料1のイ・2のイ(かかりつけ薬剤師が行った場合)を算定する旨を、あらかじめ地方厚生局長等に届け出る必要があります。個人要件・施設要件を満たしたうえでの届出となります。
改定対応、届出のヌケモレを防ぎたい方へ
本記事は令和8年度改定の一次資料と疑義解釈をもとに整理しています。点数・要件の詳細や経過措置は改定後も更新されるため、届出・算定前の最終確認を習慣化しましょう。関連記事もあわせてご覧ください。
本記事は令和8年度診療報酬改定の概要資料(調剤)・個別改定項目・留意事項通知・疑義解釈等の一次資料に基づき作成しています。制度の最終的な解釈・運用にあたっては、厚生労働省発出の告示・通知・疑義解釈の原文をご確認ください。


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